アナログ回路設計の教科書(英語の本)
趣味でアナログ回路設計の勉強をしているので、せっかくなので今までに読んだ教科書の感想&おすすめリストをまとめておこうかと思います。思ったより長くなりそうなので日本語の本と英語の本で記事を分けました。
Analog Integrated Circuit Design (Wiley Desktop Editions)
- 作者: Tony Chan Carusone,David Johns,Kenneth Martin
- 出版社/メーカー: Wiley
- 発売日: 2011/12/13
- メディア: ハードカバー
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私のおすすめ度No.1の本です!この本は本当に良いよ!ラザビ本は回路の分析がメインだったんですが、この本はどうやって回路設計すれば良いかが分かりやすく書いてあります。数式も簡単かつ最低限にまとまっているので、アナログ回路初心者の人でも気合があれば全部読めると思います。特に、周波数応答&フィードバックとオペアンプの設計の章はかなり良いです。
- ポールとゼロの数学的な説明と物理的な意味が分かりやすく書いてある
- フィードバックをかけたときの安定性の議論がラザビ本より親切に書いてある
- オペアンプの設計指針が超親切に書いてある(電流を減らしたいとかノイズを減らしたいとか)
個人的には周波数応答とフィードバックの安定性がアナログ回路の1つの山場だと思っているんですが、この本はその辺りを分かりやすくカバーしています。
ちなみに、私はこの本が好きすぎて20回以上読みました。誤植が多すぎるのがやや気になるんですが、誤植リストが作者のwebサイトにまとまっているので問題ないはずです。
- 作者: Behzad Razavi
- 出版社/メーカー: McGraw-Hill Higher Education
- 発売日: 2016/01/22
- メディア: Kindle版
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最新のラザビ本(第2版)。日本語に翻訳されているのは第1版なので、最新のやつを読みたいなら英語で読むしかないです(2019年7月現在)。アメリカのアマゾンだとなぜかインドバージョン(紙の質がちょっとだけ悪い)が安く買えます。
肝心の内容はというと、70%くらいは第1版と同じです。第2版で良くなった点は
- ナノメートルプロセス(ex. 40nm)でのアナログ回路設計が追加された。wire-line系の高速な回路とかADCを設計するときに役に立つかもしれません
- フィードバック&安定性の部分が増量&だいぶ分かりやすくなった
- 回路の最適化の方法について新しい記述が増えた(第1版は回路分析がほとんどだった)
- 細かいところが改善(低電圧電流源のバイアス回路とか)
もともと第1版も良い教科書だったのですが、第2版はより完成度が上がっていて何度でも読み返すべき教科書だと思います。そんなに高い教科書でもないので、とりあえず買いです。
Analysis and Design of Analog Integrated Circuits
- 作者: Paul R. Gray,Paul J. Hurst,Stephen H. Lewis,Robert G. Meyer
- 出版社/メーカー: Wiley
- 発売日: 2001/02/15
- メディア: ハードカバー
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アナログ界隈では有名なPaul Grayの本。アナログ回路やるなら読んでおけと言われる超有名本です。最新のやつは第5版なんですけど、日本のアマゾンで見つからなかったのでテキトーなやつを貼っておきました。アメリカのアマゾンだと第5版のペーパーバックが28ドルで買えます(2019/8/25現在)。
実際の中身なんですけど、私的には微妙でした。理由を簡単に述べると
- 内容が古い&他の教科書でカバーされてる内容が多い
- 例題の内容が古い
- バイポーラが多い
- 内容&記述がすごく親切かというと微妙かも
という感じでした。ちなみにBandgap reference周りはとても良くまとまっているので読んでみる価値はあると思います。全体的にはあまり好きな感じではなかったので、何か分からないことがあったときに一応確認してみるくらいの用途として使っています。
個人的には微妙な感じだったんですが、世間一般的には評価が高いようなので他の人には合うかもしれません。まあ28ドルならとりあえず買って一度読んでみるのをおすすめします。
CMOS Analog Circuit Design (The Oxford Series in Electrical and Computer Engineering)
- 作者: Phillip E. Allen,Douglas R. Holberg
- 出版社/メーカー: Oxford Univ Pr
- 発売日: 2011/08/05
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ちょっとマイナーな感じがしますが、この本もまあまあ良い本だと思います。特に、オペアンプを自分で設計するときに役に立つ気がします。特に、オペアンプの最適化設計について他の本より詳しく書いてあるので、ほとんどの場合はこの本に書いてあるように設計するだけでそれなりのオペアンプを設計できるはずです。
個人的には、イマイチ物語性というか読んでいて面白い本ではないので、必要なときに参照するという使い方がメインです。オペアンプのプロになりたい人は本気出して読むと良いかもしれません。
Analog Design Essentials (The Springer International Series in Engineering and Computer Science)
- 作者: Willy M Sansen
- 出版社/メーカー: Springer
- 発売日: 2005/07/01
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電子回路大好きおじいさん感が出ているSansen先生の本です。中身はいわゆるアナログ回路の教科書にありがちなアンプから始まって細かい要素回路に続く構成です。この教科書の面白いところは、まさかの全ページがスライドベースなところです。図が大量に出てくるかわりに文章は少なめです。
肝心の内容ですが、使える回路技術の例は大量に示されていますが、本質的な説明は結構テキトーな感じがします。どちらかというと学会のチュートリアル的な感じでしょうか(スライドベースなのでたぶん何かのチュートリアルを貼り付けた感じなんでしょう)。この教科書だけを読んでもイマイチ理解しきれない気がします。ただし、リファレンスがきちんと貼ってあるので、原著論文まで自分で読みにいけば問題ないとは言えます。個人的には、この本も辞書的な使い方がメインです。必要になったときに読んでみて使えそうなものがあれば詳しく調べるという感じです。